タコバインダーのミシンと工業用ミシンの中古市場についての小話

ミシン整備, 新規設備

タコバインダー、タコ縫い…名前の由来が気になりますが、つまりは二本針の環縫いミシンのことですね。
一般的にはTシャツの肩から衿にかけて、よく見かける縫い方です。

最近この縫い方をメンズショーツに使うブランドさんが多いと感じています。
弊社には二本針の本縫いはあるんですが、この二本針の環縫いミシンは無いんです。

縫製工場というのは設備産業です。
仕様に合ったミシンがあれば仕事を受けれる、無いと受けれない。
「それじゃミシンを増やせばいいだけじゃん」
と答えは明快ですが、新しいミシンというのは高額なんです。

例えばフラットシーマーだと新品で150万円ぐらい!
今回のタコバインダーミシンだと新品で60万円ぐらいです。
皆さんの予想を超える高さでしょ(笑)
いつもミシンを買うときは「ミシン代金の回収がいつになるやら…」という心配をしています(笑)

そのため当然ですが中古を買うかという選択肢が出てきますが、中古ミシンを導入するにあたり3つ壁とクリアしないと量産では使えません。

問題①:欲しいミシンが中古市場にないことがある。
悲しい話ですが、国内に流通している中古ミシンというのは、その多くが廃業された工場で使われていたモノがほとんどです。そして海外の工場へ輸出されていきます。これが国内におけるミシン中古市場の現状です。

問題②:機体状態の見極めが難しい
例えば三菱の本縫いはJUKIのそれより安く中古市場に出回っています。
では、なぜ安いのか。単純に機体の状態は価格に反映されますが、製造メーカーが部品供給をしていない場合があります。
実際に弊社は3年前にどうしても本縫いが必要で三菱製を購入しましたが、糸切り用の部品の供給が終っていて、悲しいかな使い捨てとなってしまいました。まぁ、部品供給されていないことは知っていたんですけどね。

問題③:整備知識のアップデートが必要
ミシンというのは、生地の特性である「伸びる、滑る、硬い、薄い…」に合わせて調整をしてあげないと、綺麗には縫えません。
「それって新品でも同じでしょ」と思った方がいるかと思いますが、新品と中古では違うのです。
新品はドンピシャでメーカー基準に調整してあります。
それをXY座標で例えると、Xが0でYが0のど真ん中に設定がしてあります。
そのため生地の特性に合わせてXが+1でYが-2という具合の調整がパッと簡単にできちゃいます。

対して中古ミシンというのは、現状がXY座標のどこにいるのか不明です。
もちろん同じミシンが工場内にあるときは、全く問題でないのですが、工場に1台もないミシンの場合は大変な思いをすることになるわけです。
そんな五里霧中の状態から、XY0の原点を探すところから始まります。
ミシンの整備というのはある程度の基礎を習得すれば、あとは応用力というセンスの域の勝負になるのですが、古いミシンというのは漏れなく難しいのですが、特に環縫いミシン、つまり下糸にルーパーが使われていたりすると、個人的には萌えます(笑)
(;´Д`)ハァハァ

きちんと使えるまで、しっかり調整します。


さてさて、タコ縫いミシン、買うべきか、買わざるべきか…。

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